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【銀座の品格】



街の品格とはその街に集う
「人」が作るもの


吉住小乃紋さん



 銀座で⻑唄を教え始めて20年が経ちました。まだほんの子供の頃からお稽古に通っていた馴染み深い街です。 街の品格とは、その街に集う「人」が作るものではないかと私は思うのですが、銀座は素敵な方を引き寄せるパワーがあるように感じます。
 思わず振り返ってしまうほど、おしゃれで美しい方とすれ違うことも銀座ではよくあります。もちろん高級ブランドの洋服や高価な宝石をこれ見よがしにひけらかしているということではありません。自分の個性を知り、身の丈を知り、ものの価値を知っている人というのはとても魅力的。シンプルなコートの裏地に素敵な柄をあしらっていたり、バッグから取り出したハンカチが可愛らしかったり、そんなさりげないおしゃれにこそ、その人の品格を感じます。帽子やスカーフを粋に使いこなした紳士も、銀座では多くお見かけしますよね。
 銀座は、おしゃれをしてピンと背筋を伸ばして歩く街なんです。寝起きのまま、普段着にサンダル履きで背中を丸めて歩くようなだらしのないことは許さないという空気がありますね。でもそれは、よそから来た方を排除するということではありません。街が人を育てると言いましょうか。銀座にふさわしい装いを、と自然と意識が変わっていくように思います。
 若い頃は少し背伸びをして身の丈に合わないものを買ってしまったり、失敗をすることもあるでしょう。でもそれを受け入れ、導いてくれる懐の深い大人が銀座にはたくさんいます。おしゃれで粋な先人たちに学んで、自分なりの品格を身につけた大人へと成長していくのです。




こだわりのない大人はつまらない




 長唄もそうですが、芸事を嗜んでいる人は総じて、実際の年齢よりも若く見えると言われます。常に人から見られることを意識しているからでしょう。美しい所作や立ち居振る舞いを日頃から自然と身につけている人は素敵です。
 でもそれは、ただお行儀がよければいいというものではありません。正しい形を身につけたうえで、それを自分のものとして表現できること。長唄のお弟子さんにもよく言うことですが、まず自分が楽しんでいないとダメなんです。教えられたままのことをただやるだけで、そこに自分なりのこだわりのない人というのはつまらない。何を大切にするのかが、すなわちその人の個性なんです。
 私はプロの方もアマチュアの方も区別しないで同じようにお稽古をしますが、芸事とは人を育てるもの。挨拶だとか目上の人を立てるとか、人としての礼儀作法を身につけずして芸の上達はありません。「足るを知る」というのも大切です。自分の身の丈にあったことを丁寧に全うできる人になって欲しいと思います。
 銀座は文化を守り、次の世代へと繋げてきた街。私も長唄という文化の中で生かされてきた身です。芸を磨き、人間を磨き続けることがこの街への恩返しだと思っています。(談)


吉住小乃紋
Profile ⻑唄演奏家。東京生まれ、早稲田大学卒。幼少より吉住流に師事、現在⻑唄吉住会唄方名取。 稽古場は銀座のメンバー制クラブ&代官山自宅。



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